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富士見市体育館屋根崩落

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規  模
 
 
建築面積:  
 
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基  礎
 
仕  上
 

今年2月14・15日の記録的な大雪の影響により、屋根が全面崩落した富士見市立市民総合体育館の見学会に参加する機会を得た。
事故後、事故原因を調査し事故の再発防止を図るため、専門家による事故調査委員会が設置された。http://www.city.fujimi.saitama.jp/40shisei/04gyouseizaisei/shingikai/2014-0226-1152-2.html
委員会は計6回開催され、第6回目となる平成26年7月15日(火曜日)の委員会終了後、「富士見市立市民総合体育館屋根崩落事故調査報告書」が富士見市長へ答申された。

1988年設計、1990年竣工の鉄筋コンクリート造+鉄骨屋根構造
メインアリーナ鉄骨造屋根全面:約59mx34m
2004年と2011年の定期点検では異常なし

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正面玄関前

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屋根は全面崩壊という惨憺たるもの

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屋根を支える梁は、上下弦材にH形鋼、ポスト・斜材に等辺山形鋼を用い、一方の支点をピン支点、
他方をローラー支点としたシンプルな単純梁構造

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ピン支点

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ピン支点から崩落した梁端部

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ローラー支点部

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ローラー支点から崩落した梁端部

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ローラー支点のベース部分
アンカーボルトが抜け落ちベース部分までもが崩落している

最終答申の報告書(案)によると、設計時に見込んだ積雪荷重は建築基準法に定める降雪量30㎝、単位面積当たりの重量60㎏/㎡であり、それに対し当日の積雪量は35~39㎝、単位面積当たりの重量は降雪後の降雨も伴い基準値の約1.7倍に相当する100㎏/㎡であった。

屋根崩落のメカニズムは、その想定外の積雪による大荷重を受け → 大梁の中央部が損傷 → 大きな曲げ変形(鉛直方向に約2,300㎜) → 鉛直変形に伴い梁の軸方向に約600㎜変形しローラー支点が崩落 → ピン支点が全荷重を受け限界強度を超えせん断破壊 → 屋根の全面崩壊に至る
報告書では屋根の崩落は設計荷重を大きく上回る積雪荷重に耐えられなかったことが主な原因で、設計及び施工上の瑕疵はないとしている。

現在、公共建築物の構造設計に当たり準用されている国土交通大臣官房官庁営繕部監修「建築構造設計基準及び同解説」には鉄骨造体育館屋根の短期積載荷重として100㎏/㎡を考慮することに定められている。この値は、今回の積雪荷重とほぼ同じ値である。
本建物の設計当時、すでに同様の基準があったものと記憶する。その基準を採用し設計していたならば、今回の事故は起こっていなかったと考えるととても残念である。
人的被害がなかったことがせめてもの救いであるろう。
体育館脇にあるカンチレバー構造の軽微な駐輪場鉄骨屋根には何ら損傷が見られない。想定外の豪雪に耐えたのである。

建築設計に携わるものとして今回の事故を教訓ととらえ、創造力を逞しく仮に設計荷重を超える力が加わっても大きな崩壊に至らないロバスト性の高い設計、あるいはフェールセーフな仕組みを取り入れた設計を実践し、不幸な事故の防止に努めたい。